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人の可能性を諦めない─“在り方”を体現する人事戦略のこれから

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人の可能性を諦めない─“在り方”を体現する人事戦略のこれから

エスプールの創業期から人事領域を牽引してきた米川さん。事業の急成長やリーマンショックといった大きな変化を経験する中でも、「人の可能性を信じ、寄り添い続ける」という姿勢を貫いてきました。本記事では、米川さんの信念や今後の展望、そしてそれが生まれた背景に迫ります。エスプールの人事戦略に宿る“在り方”と、現在注力している取り組みを通じて、これからの人事が果たすべき役割を描き出します。

米川 幸次
米川 幸次 エスプール 執行役員 人事本部 本部長

株式会社エスプールの創業期より参画。人材事業の地方拠点立上げ、上場時の業務再構築などを手掛け、上場後はコンプライアンス推進部門と人事部門の統括責任者に。
2010年グループ人事全般を統括する人事本部を立ち上げ、執行役員人事本部長に就任。
現在まで、子会社を含むグループ8社の人事制度の整備・運営、人材採用・育成、人事・労務管理を担う。

前職の求人広告業で叶わなかった“本質的な支援”を、エスプールで

まずは入社までのキャリアについて教えてください

大学卒業後は求人広告会社に就職し、約3年間勤めていました。当時の営業は“広告を出すスペースを売る”という仕事で、必ずしも採用決定につながらないというもどかしさを感じていたんです。本来、課題解決の手段であるべきなのに、スペースを売ることが目的になってしまっている点に疑問を抱いていました。

そんなとき、学生時代に面識のあった浦上さん(現 代表取締役兼社長)からエスプールに誘われ、「この会社なら人材課題に対する本質的な支援ができるかもしれない」と感じて転職を決意しました。前職で感じていたもどかしさや、日本の働き方そのものを変えていくような構想に胸を打たれ、設立から2か月遅れでエスプールへ入社することになりました。

エスプールはどのような事業成長を遂げていったのでしょうか?

1999年の創業当初は、プロジェクトごとに多くの人を採用し、自身がリーダーとなって顧客の業務を代行するビジネスで成長していきました。しかし、スポット的なプロジェクトでは売上が安定しないため、登録型派遣モデルに切り替え、東京と大阪に拠点を設けて事業を拡大していきました。

各拠点で成功体験を共有しながらビジネスモデルを構築し、全国展開と業務フローの改善を進め、2006年にはヘラクレス市場への上場を果たしました。ところが、2008年にリーマンショックが起こり、大きな影響を受けたのです。

リーマンショックにより、どのような影響が及びましたか?

経営が一気にシビアになりました。特に印象に残っているのは、自分が採用に関わった社員がやむを得ず退職していったことです。もちろん引き留めたい気持ちはありましたが、赤字経営の中では割り振れる仕事もなく、とても悔しい思いをしたことを今でも忘れられません。

“人を諦めない”を軸に─人事戦略の進化

リーマンショック以降、人事戦略の方向性が変化したとお伺いしました

悔しい経験をバネに、エスプールで働くすべての人が “諦める選択をしないで済むように” したいという想いが芽生えました。たとえ環境が変わっても、仕事やキャリアを諦めなくていいような土台づくりに注力するようになりました。

ポートフォリオ経営への転換で多様な人材が集まり、“一人ひとりと向き合うことが重要だ” という意識も強まりました。加えて、新規事業の拡大に伴い仕事の種類が増え、それぞれの人材に合った配置が可能になったことで、結果的にエンゲージメントも高まりました。

そのほかに、人事戦略の方向転換後に変化した点があれば教えてください

組織が多角的になっていく中で、裁量を持って活躍できる人材を採用するようになりました。また、今も続くリーダーシップ教育のための体験型ワーク「Discovalue(ディスカバリュー)」もこのタイミングで誕生しました。 

Discovalueとは? ─ 学生の“素の姿”を引き出す、エスプール独自の採用プログラム ─

「Discovalue」は、発見(Discover)と価値(Value)を掛け合わせた造語。
学生は即席のチームを組み、制限時間内に役割分担をして課題解決に挑戦します。与えられたルールの中でどのように意思決定し、行動し、他者と関わるか──そのプロセスを人事が観察することで、紙面や面接では見えない“素の姿”やポテンシャルを捉えることができます。リーダーシップや人との接し方、コミットメントの強さ、変化に対する適応性、仕事を楽しむ姿勢等の当社で活躍できる素養を事前に確認することで、当社らしい文化形成を入り口から構築できると考え、今でもインターンシッププログラムとして生かしています。

「人事の在り方」を体現するHRBP─その真価と未来

会社の規模が拡大していく中、現在課題に感じていることはありますか?

社員が増えたことで、すべての社員と向き合うのが難しくなってきた点は課題だと感じています。そこで、HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)を発足しました。

HRBPとは、各事業会社に人事担当を配置し、採用・定着・育成といった人事機能を、より現場に近い立場で担う仕組みです。

私が考える“人事の在り方”とは、制度や仕組みを整えることにとどまらず、社員一人ひとりの人生に本気で向き合い、その人が抱える不安や迷い、そして未来の希望にまで寄り添う姿勢だと思っています。

だからこそ、一人ひとりと向き合い、社員の本質を理解する大切さをHRBPに伝えるには、まずは私自身がその姿勢を体現しなければならない。人事全体の意識を変革するためにも、人事本部長として “向き合うとはどういうことか” を示し続けたいと考えています。

HRBPの発足により、今後期待していることはありますか?

HRBPを軸に、“社員のキャリアに寄り添う体制” が整い、会社全体の人的資本力が高まることを期待しています。社員一人ひとりが自分のスキルを活かしてやりがいを持って働けるよう、グループ人事として各社の環境づくりに尽力していきます。

そのためには、単に「制度を運用する人事」ではなく、「現場とともに考え、寄り添い、成長を支援する人事」であることが求められます。HRBPはその象徴的な存在であり、各事業会社に根差しながら、社員一人ひとりの可能性を見出し、それぞれに合った支援や配置、育成を模索していく役割を担います。

これからも、変化の激しい社会やライフステージの中で、社員が自分らしいキャリアを築き、前向きに働ける環境を整えていくことで、「ここで働いてよかった」と思ってもらえる組織をつくっていきたいと思っています。



社員一人ひとりの人生に寄り添い、その可能性を信じ続ける─それこそが、米川さんの語る“在り方”。人事とは、制度を運用することではなく、人に向き合い、支え続ける行為そのものにほかなりません。その“在り方”をこれからも貫き、人を軸にした組織づくりを進めていく姿勢には、エスプールの人事が大切にしている価値観が根づいています。

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